こころの法話集203
お話203
互いに相手の立場に
坂井町下兵庫・丸岡高教諭 森瀬高明
心の距離
「おはようございます」のあいさつを皮切りに職場の一日が始まります。サラリーマンにとって、職場は生命の燃焼の場です。一日生きる激しい実感が朝のあいさつから始まります。ですから、職場の同僚は、「生命」を燃やし合う真実の友でなければならないはずです。しかし、現実の姿としては立身出世のために厳しい競争相手として自分の前に立ちはだかっていると言った方がいいのではないでしょうか。
私たちは職場で親友を得ることができるだろうか。もし親友のつもりで、自分の気持ちを打ち明けて、手ひどい経験をした者が数多くあります。仮面のようなかりそめのほほ笑みや、お追従(ついしょう)に満ちあふれた職場の中には、私たちの心は片時も安らぎはありません。
近代哲学者キェルケゴールは言いました。「人と人との心の距離は、空の星相互のように離れている」と。これが現代人なのでしょう。でももしだれかが真心をもって、職場の人と人との距離を縮めるように努力しはじめたら、その人は信頼され、尊敬を集めたでしょう。
もし裏切られたら、すぐに決意しましょう。この職場での裏切りの犠牲者は、自分で最後にしよう。この無念さ、つらさは絶対人に味わわせてはならない。憎しみに報いるに、いたわりをもってこたえたら、必ず職場は楽しいものになっていくに違いないと。無量寿経に次のような言葉があります。
「お互いに相手の立場に立って行動しよう。憎しみ傷つきあってはいけない」と。人間の一生は、その意味ではとても短いものです。