こころの法話集002
お話002
煩悩と菩提が一つに
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
かみ合わない
おやじさんの言葉。「若い時は二度ないんだぞ。お前みたいに、のらりくらりと暮らして、どうなると思う。年をとってからつらい思いをするのは、お前自身だぞ。しっかりせい」。息子の言葉。「若い時は二度ない。だから今を楽しまなきゃ。年をとったらなんて考えるのは、じじむさい、じじむさい」。これではこの親子はかみ合いません。
親子ともども、おれがおれがの気持ちが先走り、他人同士よりも悪くなります。なにか、よその国へ来たような感じになってしまいます。
「外道」という言葉があります。「心、道の外に遊ぶがゆえに外道という」。近きにいましても、道がはずれれば遠いものです。ここにそれを嘆く人もあります。
その『人』は「離れる距離、十万億土」と嘆き、永遠の真(まこと)を感じ、真の安らぎを見いだして行こうとします。そこには人間のはからいを超えた深い世界があります。その世界は、かみ合わない親子の二種類の違ったものをも一つにしていく世界かもしれません。
「煩悩と菩提」この二つはまるっきり反対の対立したものです。「よごれた私の思い」と「仏を思う心」これが一緒になるというのですから、仏智の深さにうなだれるだけであります。