こころの法話集092
お話092
かけがえのない自分
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
「私って?」
よく耳にする言葉に、「自分自身を大切になさい」というのがあります。テレビのドラマなどにでもよくお耳にかかります。大変気持ちよく、決まった感じの言葉ですが、どうでしょうか。何か、こう、自分も一回言ってみたいような気もいたします。
ところが、この言葉を今少し、真剣に考えてみると、簡単ではなさそうなんですね。一応はいいなあと、感心させられる言葉かもしれませんが、果たしてその言葉を気持ちよく言っている本人も、「一体どんな風に自分を大切にすればいいのか」ということが分からずに、ただうつろに言葉を言っているのではないでしょうか。
「自分自身を大事になさい」。簡単な言葉ですが、どうでしょう。自分自身ということは、体と心、この二つとも自分自身ということでしょうから、「自分を大切になさい」ということは、まず、体の方では、けがをしないとか、病気をしないように大切にするという意味と、今度は心を大切にするということも含まれるものでしょう。
そうしたものをいっさいがっさい含めた主人公である自分の全体、言い換えれば、命全体といった方がいいかもしれません。こうして考えると、「自分自身を大切にしなさい」という言葉は、他人に言う時も、自分に言う時も、深く味わいたい言葉です。
世界三十七億の人間の中で、自分以外にもう一人の同じ自分は見いだすことが出来ないのです。天にも地にも、たった一人のかけがえのない貴重な自分自身と気付くべきでしょう。釈尊は「天上天下唯我独尊」と言われましたが、我独りなるがゆえに尊いと読ませていただいてもいいのではないでしょうか。