こころの法話集178
お話178
まず念仏から始まる
坂井町御油田・演仙寺前住職 多田淳政
話し合い
このごろは話し合いが少ないといわれています。親と子との話し合い、夫婦の間の話し合い、先生と生徒との話し合い、そして一般に人と人との話し合いが少なくなっている。そこに心の通い合うことがなくなって、親子の断絶とか、夫婦の感情のもつれ、そして一般にギスギスした人間関係が生じてくるのではないでしょうか。
しかし、話し合うということは、私と相手とが、ただしゃべるということではありません。それでは、単に二人が勝手にしゃべっているだけで、いつまでたっても平行線です。話す前に相手の言葉をよく聞くことが大切ですね。相手の話をよく聞き、相手の心を十分に受け取った上で、こちらからも話をしてゆく。話し合いのもとはまず聞くことでありましょうね。そこに初めて温かい心の通い合いが生まれてくるのです。
仏さまと私との話し合いも少なくなっているのではないでしょうか。それは、仏さまのお呼び声を聞いていない証拠でしょうね。仏さまはいつも私に話しかけていて下さるのです。それがお念仏です。そして私のご返事もまたお念仏なのです。
お念仏は、「死んだらどうぞ助けて下さい」と、こちらから勝手に願う心でもなく、ましてや、何かご利益を与えてくださいと祈る心でもありません。お念仏は仏さまと私との話し合いなのです。
妙好人の才市さんはこう言っています。
なむあみだぶつ なむあみだぶつ
ねんぶつは親のよび声子のへんじ
なむあみだぶつ なむあみだぶつ
よくよく味わわせていただきたいものです。