こころの法話集237
お話237
貧欲が苦しみのもと
清水町島寺・浄福寺住職 藤井信哲
二十一世紀は宇宙の時代で宇宙旅行が予想される一方、スターウォーズなど宇宙戦争の心配があります。人類は進歩しているのか、滅亡へ向かっているのか、不安な感じがいたします。
科学が進歩していることは間違いないのですが、人間は進歩したとはいえないところがあります。それは人間は煩悩があるからでしょう。煩悩とは私どもを苦しめる心の働きをいいますが、お釈迦さまは三つの煩悩のなかの貧(どん)欲(限りなき欲望)に苦しめられる現実について、次のようにお示しになっています。
「世間の人は浅はかで悪と苦の世の中で必死に働き、すべての人は金銭や財産の苦労ばかりしている。それがあってもなくても心配し、悩み、心の安らぐときがない。田があれば田の悩み、家があれば家の悩みがあり、すべて心配のもとである。それらは焼けたり水に流されたりして消えうせるものである。災難で死ぬときはこの財産も捨てて、ただ一人この世から去っていかねばならない。しかし田がないと欲しいと悩み、家がないと家が欲しいと心配する。財産があってもなくても心配し苦しみ、その苦しみにたえかねて身をそこねて死ぬこともある。一生の間善をなさず、道徳を守らずしてむなしく死んでいく」(無量寿経)
二千五百年前のお教えですが、我々は今も同じことをやっています。子供のときから受験地獄に苦しみますが、よい学校に入り、よい会社に入り、財産を多く得たいからです。そのためにどんなことが行われているかは、テレビ、新聞の報ずる通りです。人はこの悪と苦悩からの救いを求めます。