こころの法話集374
法話374
苦難をこえて(一)
東京・当光寺仏教婦人会 反保滋子
重度心身障害児を三番目に持つ私は、学齢期になっても受け入れてもらえず、店の忙しいこともあって、主人の母が十四歳までみてくれたのでございます。東京都の全員就学が実施されるようになったことは、私たちにとってかけがえのない喜びでございました。
小学部の時はスクールバスで登下校いたしましたが、中学部になり一人通学となって自信ができたのもつかの間、電車に乗るということを覚えたためか、一人で途方もない所に行って保護されることもしばしば起きて、私たちの悩みはいつになっても解決しそうにありません。
しかも、他の子供たちが兄弟に精薄児がいるという苦しみを抱いていることを思った時、凡夫である私たちはただただ苦悩に沈むばかりでございます。
しかしおかげさまでございます。かねてからお聞かせいただいております如来のご本願は、私のためにたてられたものでございました。苦しみ泣いている私といっしょに泣いて下さる阿弥陀如来様がおられたのでございます。私は一人ではなかったのでございます。主人も子供も一人ではなかったのでございます。
私たちの苦悩がご縁となって、阿弥陀如来様のお慈悲を聞かせていただいた時に、ただただおかげさまでと喜ばせていただく世界があったのでございます。精薄の子供を拝みたくなる私の気持ちが、あなた様にはおわかりいただけますでしょうか。