こころの法話集031
お話031
根気よく聞法し身に
福岡・円徳寺住職 野上正行
何をさしおいても③
三河(愛知県)にお園さんという妙好人がいました。妙好人とは、浄土真宗の代表的な人を言うのですが、このお園さんが、ある日山で、山犬に出会ったことがある実話が今日残っています。山犬というから、小犬でなく人間を襲ってくる大きな犬です。
犬というのは、こちらが逃げると追っかける習性があるので、お園さんは逃げれば、どんな目に遭うか恐ろしいし、と言って立ち向かうには、女と犬では勝負にならず、どうしたものかと、じっと考え、ついに念仏申したそうです。妙好人といわれる人ならば、さもあらんと思いますが、結果は、何を思ったか、その山犬が逃げて行ったというのです。
これを聞いた人々は、十人十色でいろいろと言った。妙好人と念仏と生活が一致した立派な人の念仏だから、犬が逃げたのだろうと。しかし、お園さんは、反対の言葉を残した。私は山犬にさえ嫌われる悪玉だったと、反省したというのです。
これは如来の知恵と慈悲の光に照らし出された自己反省、浄土真宗の聞法は、ここまで人間を高めていこうとしています。道は遠くても根気よく聞法して行けば、時を計って、み仏が生きてきたかいがあったと喜ばれ、身にしてみせるとのお約束が弥陀十八願です。聞かし頂きましょう。どこまでも、何をさておいても。