こころの法話集163
お話163
信うることの重要さ
東京・大東文化大教授 五十嵐明宝
妙好人シリーズ⑤
道宗は蓮如上人が井波の瑞泉寺に出向された時にはどんな雪の日も、聞法の座に必ずつらなりました。またその後、上人が京に帰って山科本願寺に住まわれるようになると、毎年何度か上洛し、しばらく滞在して、蓮如さまの常随の門弟となっていたようです。その間に本願他力の幹要な点を詳しく聞いていたことでありましょう。
そして、北陸の門信徒に念仏往生の道を伝えようとしますが、簡単には受け取ってもらえず、蓮如上人から手紙に教えを書いてもらって持ち帰り、それを有縁の人々に見せては如来大悲の教えを勧めました。ある時は彼の妻のためにわざわざ京にのぼり、一通のお文
を頂いてきたこともありました。
しかし、蓮如上人は道宗の願いをすぐ入れて、いつも簡単に「お文」を書いたのではありませんでした。ある日のこと、道宗が上人に「お文」を書いてほしいと申し上げると、「文は落とすこともある。けれども、心に信をさえ、しっかり頂けば、落とすことはないであろう」と、真実の信心を決定(けつじょう)して、自然に伝道することの尊とさを教えられました。道宗の心得・二十一ケ条には、まず信をうることの重要さを重ねて示しているのです。