こころの法話集228
お話228
煩悩は消え去らない
清水町島寺・浄福寺住職 藤井信哲
「弥陀たのむ人は雨夜の月なれや、雲晴れねども西へこそいけ」
先人のお領解の古歌ですが、つづめて言えば正信偈の「不断煩悩得涅槃」の意味に通じると思います。ご信心いただくとどう変わるかということが末信の方の気がかりのところのようですが、煩悩がなくなるわけではありません。
真如の月に照らされるべきだが、煩悩の雲がおおうところであるということです。貧愛瞋憎之雲霧、常覆真実信心天=まどいの雲は消えやらで、常に信心(まこと)の天(そら)覆う=それが凡夫の現実です。
庄松妙好人が「ご信心いただいたら、どんな感じだ」と友人から聞かれて「何ともない」と答えました。自分に用事がない-自力のはからい無用であります。もっともご信心をいただいて往生がきまった正定聚の場合、菩薩の四十一番目の歓喜地と同じですから、一念の喜びがおこります。(能発一念喜愛心)し、お念仏を申す気持ちになります。しかし、怒るときもあります。それでも、すぐ浅ましいわが身を恥じて心柔らいでいきます。そのままのおたすけとは煩悩あるまま、計らいせずです。