こころの法話集442
法話442
心の通い合う世界(ともに悩み慈悲を仰ぐ)
坂井町御油田・演仙寺前住職 多田淳政
相手の立場
このごろのニュースを見ると、国外でも国内でも、相手を攻撃するような記事が多くて、ギスギスした、いやな世の中だなあ、という感を深くします。私たちの身辺を眺めても、自分は悪くないが、相手が悪いのだというぐち話ばかりで、何だかやるせない気持ちになります。
考えてみると、こういう考え方は、相手を自分の思うようにしたいという勝手な考え方で、結局は自分が腹を立てるばかりで、自分の救いにはなりません。
親鸞聖人は、御和讃の中で、真実という言葉の左側に「ジツトイウハカナラズモノノミナモトナル」ことだと注記されています。この「モノノミトナル」という言葉はいろいろに解釈されていますが、一つには相手の立場に立つことといわれています。自分のことばかり考えないで、相手の立場に立って考えること、それが真実、まことということでありましょう。
自分が苦悩していると同じように、相手も苦悩している。自分が精いっぱい善意を持って生きようとしていると同じように、相手もまたそうしている。そう考えるとき、自分の考え方の勝手なことにも気付き、必ずしも相手のみが悪いとは思われぬのではないでしょうか。
そこに、初めて互いに心の通い合う世界が開けてくるのであり、そこにこそ、自他共に悩み、自他共に仏さまの慈悲を仰ぐ世界が開かれるのでありましょう。