こころの法話集003
お話003
自己制し、善につなぐ
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
自らを愛するとは
仏教では、自己を愛する道、自愛の世界を、自己を真に大切にする道として特色を持っております。よく世の中には、「世に子供ほどいとしいものはない」ということがありますが、これに対して、お釈迦さまは、「自己ほどいとしいものはない」と、はっきりと述べられています。しかし、一面では、仏教は無我を説き、愛は煩悩なり、とも教えられています。また仏教というと、さまざまな苦しい行をして、禁欲的な自分を傷めつけるような教えのイメージもあります。しかしこれは、自愛の精神に立った考え方なのです。無我として示されたのも、すべて自己を愛するためにはどうしたらよいかという、自愛の道にのっとられた上での事に外なりません。自愛の道は、自己の欲望をことごとく満足させるところにあるのではないのです。それはかえって自己を損ずる道なのです。よく自己を制し、自己を善に結びつけることこそが自愛なのだと示されたのです。仏法は、本当に自分をいとおしみ、大切にする「教え」ということが出来ます。