こころの法話集004
お話004
己愛すは人も同じ
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
わが身つねって人の痛さを知れ
釈尊のお言葉に「いずこを尋ね求むとも、自己よりいとしきものはなし。思いは人も同じくて、己にまさるものあらじ。それゆえ、自己を恋しくば、人を害(そこな)うことなかれ」とございます。つまり釈尊は、人間にとって自己が何よりもいとしいものであるということを、はっきりとお認めになっているのです。
しかし、自らを愛する道は、自己の欲望をことごとく満足させるということではありません。それはかえって、自己を掲(えん)ずる道でしょう。よく自己を制し、自己を真っすぐに伸ばして行くことが、自らを愛するということでしょう。
また、今一つ、釈尊の言われた大事なことは、この自らを愛するという内容を、ほかにも及ぼすということであります。自らを愛し、自らを利していくという行は、利他、すなわちほかのものをも利して行くことによって、初めて完成されるということが出来ましょう。自分と同じようにだれしも自分が一番かわいいということを知るべきでしょう。ですから、人を傷つけてはいけないということです。「わが身つねって、人の痛さを知れ」ここに仏教があります。