こころの法話集007
お話007
「とらわれ」を捨てる
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
仏教の嫌うもの
仏教とは一体どんな教えなのだろうか-と考えてみた場合、仏法の嫌うものは一体なんだろうという考え方をするのも一つの方向だと思います。その第一にあげられるのは、「とらわれ」ということです。何ものであれ、それに「とらわれる」ということを極端に嫌うのです。
例えば「仏に逢うて、仏を殺す」といわれるほど、たとえ仏であろうと、自己にとらわれを作るものであるならば、それを切り捨ててしまうというのです。とらわれると、自己が自由を失ってしまい、束縛されてしまうと見るのです。すなわち、とらわれますと、仏も仏魔になってしまうのです。
有名な話ですが、ある坊さんが、川を渡れなくて困っている若い女性を、背中におぶって渡してやったところが、後々、ほかの坊さんが非難したそうです。その時、その坊さんは「お前さん方は、まだ娘さんを背負っているのか、私はとうに川岸に下ろして来たのに」と言ったそうです。
「とらわれ」ということがいかに、人間にとって、また仏法にとって、重大なことかとうかがわれることであります。