こころの法話集012
お話012
平凡な中にまこと
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
眼は横に鼻は真っすぐ
道元禅師は、中国に五年間勉強に行かれました。修行を終えて日本に帰られた後、いろいろと書物などをお書きになられましたが、その中で、中国で学んだことはそもそも何であったか。と顧みられています。
その結果、「眼横鼻直」と表された有名な言葉があります。「眼は横に、鼻は真っすぐについている」ということ、すなわち、当たり前のことと言っておられるわけです。道元禅師は、中国五年の修行で、至極当然の事実であることを知っただけだと述べておられるのです。

これは禅師が謙そんしているわけでもなく、ふざけておられるわけでもありません。これは禅師の大きな自信の表れでありましょう。毎日の生活、当たり前の毎日の中にこそ、宗教のまことがあるということでしょうか。
ある有名な禅僧は「死にとうないな、死にとうないな」と言いつつ亡くなられたそうです。また、鈴木大拙先生は「この痛いのがかなわん」と、言われたそうです。親鸞聖人のご臨終にも、何一つ不思議な事は起こりませんでした。凡俗を出て凡俗に通ずる道です。平凡な毎日の中に光るものこそ宗教です。