こころの法話集021
お話021
自分は主人公でない
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
「私の中で返事をするもの」
中国に師彦禅師というお坊さんがおられまして、自分で自分を呼んで返事をしていたそうです。
毎日「ご主人!」「ハーイ」「目をさましておれよ」「ハーイ」「人にだまされまいぞよ」「ハイ、ハイ」といった具合だったようです。
ここで「ご主人」というのは、自分の中の主人たるべきものを呼び出しているのです。「人にだまされまいぞよ」の「人」というのは、自己の中の欲望やいろいろな悪心ということが出来ましょう。そういうものに妨げられてはいけないから「目をさましておれよ」と主人公に呼びかけているわけです。
私たちは、ともすると、自分の主人公を見誤ってしまうことがあるようです。欲望的な自己を主人公だと思ってしまいます。しかし、本当は、そうではなくって、その欲望いっぱいな自己に「それでよいか」と呼びかける自己、その自己こそが、大切な真実な自己であり、自分なのだと、仏法では教えているのです。仏法の見方は、一歩ふみこんだ私を思いだす法なのです。