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こころの法話集026

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お話026

”一方通行”のお慈悲

福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾

与えてはみたけれど

お慈悲という言葉がございます。慈悲という言葉は、仏の慈悲、あるいは親の慈悲、それ以外には使わないものであります。慈悲の働きというものは、仏さまから衆生の方へ、私たちの方へ、また親から子供へと、一方的に働いていくものであります。
ですから、そこには反対に返ってくるものは何ものもありません。一方通行であります。報いられるという事もありません。そんな期待を持ったならば、出来る事ではないのであります。しかも報いられる事もなく、行きっぱなしの中にその事を満足し、喜びを感じます。そして、悔いのない誇りが出てきます。
それが慈悲ではないでしょうか。こんな心は、外の人間の関係では、持てるものではないのであります。どこまで与えれば奪うという、打算と申しましょうか、てんびんと申しましょうか、それがあるのであります。ですから、夫婦の間でも、兄弟の間でも、あるいは親友の間でも、ある意味では同じ事が言えるのではないでしょうか。

お話026

仏の慈悲は真実の知恵というものに裏づけられているので、うまくいきますが、親の慈悲は、これは難しい言葉ですが、無明、迷い、この無明の中で動いていますので、今度は思いとは反対に、結果はうまくいかない事もあるのであります。ですから、後悔も多い事であります。子供のためが、子供のためになっていない事もあり得るのであります。しかし、ひたむきなお慈悲の姿は、美しいものであります。

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