こころの法話集040
お話040
人の立場 まず認める
金沢市・瑞泉寺住職 杉谷斉
思いやり
ある結婚式の披露宴で、「思いやり」が大切だと結んでおられた祝辞がありました。全く同感で、「思いやり」の心が家庭や職場などの人間関係を明るく温かいものにする最大の要因だということは、だれも異論のないところでしょう。
だから、この言葉はいつも簡単に使う言葉でありますが、実は「思いやり」の心が何によって生まれて来るのか、また、どういうことなのかを改めて考えてみることはないように思います。
「思いやり」とは、他人の心を、立場を思いやることなのだから、まず第一に、私たち一人ひとりが全く異なった、それぞれが特殊なものだという事実を認めることがら始まる訳でしょう。
ところが、知識の上では、頭の中では、顔が違えば心も違う、一人も同じ人間はいないのだということを十分承知しておりながら、その事実を忘れていることが多いと思います。

人は皆、全く同じ考えの者はいないし、ものの見方、受け方もみんな違うということを認めた上で、初めて他人の心や立場に思いをやることが出来るのではないでしょうか。
「思いやり」。それは、だれもがよく使う言葉ですが、そしてだれもがそうあってほしいと思い、そうありたいと思う言葉ですが、なかなかどうして、大変難しいことで、時折は、この言葉の持つ意味をゆっくり、深く考えてみたいと思います。