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こころの法話集126

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お話126

「兄貴覚悟はよいか」

福井市松本四丁目・千福寺住職 高務哲量

讃岐の庄松(中)

庄松さんは、事情の許す限り毎年御本山まいりをされましたが、ある年、いよいよ帰敬式(おかみそり)を受ける事にしました。同行の人たちと整然と並び、受式を待っていますと、順々にご門主が一人一人の後から、頭におかみそりを当ててゆかれます。
ところが、庄松さん、自分の番が終わり、隣の同行へご門主が移られると、座ったまま、そのご門主の衣の袖を引っ張って言うには、「兄貴、覚悟はよいか」。この一言に、一緒に帰敬式を受けた同行の方が青くなってしまいました。封建時代のことですから、どんなおとがめがあるやら、自分たちまでそのとばっちりがあるかもしれない。
だから、あんな変わり者と一緒に本山まいりするのは嫌だったんだ、などと言い合っていると、案の定、呼び出しがありました。こいつは少々頭が変なんで、先ほどのご無礼は何とぞお許し下さいと、仲間の同行がかばってくれたにもかかわらず、来いと言うなら行ってやるぞと、意気揚々と本山の役人の後をついて行く庄松が、通された部屋に座っていると、ご門主が入って来られました。

お話126

「そなた先ほど、このわしに何と言うたか、もう一度言ってみよ」「何度でも言うてやるわい。兄貴、覚悟はよいかと言うた」「よう言うてくれた。わしを門主としてたてまつってくれる者は多いが、わしの後生を心配してくれたのは庄松よ、そちが初めてじゃ。これで庄松とわしは同じ如来様を親と仰ぐ兄弟じゃ」と兄弟の盃(さかずき)をくみ交わし、その後庄松さんはご本山へまいる度に、兄貴はいるかと、真っすぐにご門主にお目どうりがかなったということです。

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