こころの法話集224
お話224
智慧ある世界の尊さ
福井市田原二丁目・法円寺住職 細江乗爾
いらぬものはない
お釈迦さまのお弟子さん耆婆(ぎば)という、お医者さんのことが伝えられています。この耆婆さんが若いころ、お師匠さんから「野に出て、薬にならない草をみつけて採ってくるように」と命じられ、何日かたって帰ってきました。そして「随分探してはみたのですが、残念ながら薬にならない草はとうとう一本も見つけることはできませんでした」と答えたという、有名な話が伝えられています。
これは智慧(ちえ)のある世界の尊さを示したものでしょう。役に立たぬもの、薬にならぬものは、この世に一つとして存在しないということを知るのには智慧の働きがあるのです。
また「善知識にあうこと難し」というお言葉もありますが、これも善知識(よき師)が少ないから、なかなかあうことが難しいということではなくて、こちらの頭が高いから、良い先生は見つからないということでしょう。一度頭が下がってみると、善知識(先生)はどこにでもおられるということを教えて下さるお言葉でしょう。
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自分の周りの人を拝めるぐらい幸せな事はないでしょう。その反対に周りの人をにくまねばならないことは本当に悲しいことといわねばなりません。人間のつながりは、そんな悲しいものではないはずです。
「捨てねばならぬものは一つもない」「信謗(ぼう)共に因となして、同じく往生浄土の縁を成ぜん」と「信心の智慧」の働く世界の尊さをたたえられたのでありましょう。