こころの法話集419
法話419
母の涙、愛のしるし(科学ではわからないもの)
坂井町御油田・演仙寺住職 多田文樹
涙の分析-目に見えないものにも光を
人間の涙にはどんな意味があるのでしょうか。悲しくて流す涙、うれしくて流す涙、くやしくて流す涙、人はさまざまな場面で涙を流します。今日は、涙の話をしましょう。
今から百年以上も前、イギリスにファラデーという偉大な化学者がおりました。彼は研究のかたわら、大学で教べんをとっていたのですが、ある日のこと、化学科の学生たちの前に、一本の試験管をもって現れました。そして、学生たちに次のように尋ねたのです。
「実は、この試験管の中には人間の涙が入っているんだが、諸君、人間の涙には何が含まれているだろうか」学生たちは、涙と聞いて多少驚きながらも、そこは化学科の学生のこと、難なく答えました。「先生、それは大部分が水で、あとは塩分が少し入っています」
「よろしい。確かにその答えで間違いではないが、人間の涙というのは、ただそれだけのものだろうか。科学的にいくら分析しても、分析しきれないものが、人間の涙には含まれているのではないだろうか」と、学生たちに疑問を投げかけたというのであります。
母親が流す涙、それはいくら科学的に分析したところで、水と塩分に過ぎません。しかしその奥には、愛情という、目には見えないが、尊いものが含まれていることを、ファラデー先生は教えたかったに違いありません。
目に見えるものと目に見えないもの。目に見えないものにこそ、光をあてましょう。