こころの法話集101
お話101
仏少女、歎異抄に救い
坂井町御油田・演仙寺住職 多田文樹
出会いのすばらしさ
ジャクリーンさんは三十二歳。花の都パリの生まれである。幼くして両親を亡くし、十三歳の時に生家もつぶれ、一人ぼっちの生活が始まる。
そんな境涯がそうさせたのか、彼女は、「今の自分、そしていつか死ぬ自分とは何ですか」との問いが、いつも自分から離れないようになった。
そんなある日、図書館で手にした一冊の本が彼女の運命を変えた。それは仏語訳の『歎異抄』であった。「一日かけて、親鸞さまのお心に出会わせていただきました。もう読む前の少女に戻れないことを知りました。『たとえ法然さまにだまされても、後悔しない』とおっしゃった親鸞さまに、ついてまいります」
それからは、仕事がなくて、おなかがすいたときも、親鸞さまのそばにまいりたい一心で、とうとう、パリ大学を出た二十歳の年で、日本へ渡って来たのである。

「船が横浜へ着いたとき、初めて親鸞さまの生まれた土を踏んで、ただ、頭を下げて合掌いたしました」と、ジャクリーンさんは述べている。
たとえ一生かかったとしても、「この人についてまいります」と言える人に出会うことは、幸いである。親鸞と法然の出会いが、そうであったと思うし、私たちは、聞法を通じて、弥陀に出会うのである。