こころの法話集119
お話119
煩悩の心あればこそ
鯖江市戸口町・乗誓寺住職 鎌数静雄
信心
浄土真宗では「ご信心」と敬語を使います。それは、私たちの心をしっかりと、かためる信心ではなく、阿弥陀如来から賜る信心ですから「ご信心」と申します。
それでは「ご信心」とは何をいただくのかと申しますと、名号六字が一人ひとりの心の中に入り満ちて下さって、信心になって下さるのであります。すなわち「私にまかせなさい」との仰せをいただくことによって、名号六字のあいだけが、一人ひとりの煩悩心の中に入り満ちて、信心になって下さるのであります。
お互いに顔も異なり、性格も、歩む道もそれぞれ異なりますが、阿弥陀如来から賜る信心は、皆一つでありますから、みんな平等に救われ、みんな平等な悟りが実現するのであります。
それでは「ご信心」をいただいたらどうなるかと申しますと、依然として煩悩の心はやみませんが、お救いに対する疑いの心がすっかり無くなって、安心させていただくことが出来ます。

今では、あさましい煩悩心を眺めて、こんな事ではと、心配していた心が、すっかりとれて、今は煩悩の心があればこそ「ご信心」がちょうだい出来ましたと、喜ぶ心が生じるのであります。ここに阿弥陀如来から賜った「ご信心」がいきいきと感ぜられるのであります。