こころの法話集120
お話120
人間らしさへの回帰
芦原町轟木・浄光寺若院 高木正之
念仏は心のふるさと
現代はコンピューター社会と言われるように、コンピューター万能の時代です。私たちの生活を考えてみても、たとえば炊飯器や暖房器なども、今ではマイコンによって動かされています。おもしろい話ですが、ある新聞にタイのバンコクにあるダマモンコン寺院が来年六月にコンピューターを導入し、信心の悩み事の相談や仏教の教義に関する質問に答えるそうです。なんとも進歩したものです。

しかし、いくらコンピューター万能と言っても、人間の心を管理したり、心の悩みを治せるでしょうか。私は疑問に思います。いくらコンピューターが素晴らしいといっても、人の心の奥まで理解はできないのです。人の心の悩みは血の通った、教えに出会うことだと思います。この教えこそお念仏と思います。親鸞聖人は二十年間、厳しい修行をされましたが、どうしても自分の煩悩に苦しみぬかれました。そして、法然上人のお導きによって、仏の願いにすべてをおまかせして、お念仏をとなえて、煩悩のまま救われていくことに出会わせていただいたのです。このお念仏の教えこそ、人間らしい心のふるさとではないでしょうか。機械文明で擦り減らされた心を人間としての豊かな心に帰したいものです。