こころの法話集144
お話144
競争ではない「人生」
清水町島寺・浄福寺住職 藤井信哲
急げど急がず
日本と米国の経済摩擦が問題となっています。外国の商品より、よい商品を作って売ることを国際競争力があるものを作るといいます。経済界では自由競争ですが、日本はなぜそんなによい商品が作れるのかと外国では不思議に思っています。
これには日本の国内競争が激しいことも原因になっているようです。子供のころから、よい学校に入るために競争します。学校の授業がすむと、塾に通って勉強するのです。交通でも少しでも早く行こうとします。「赤信号みんなで渡れば怖くない」などの冗句があるくらいで、青信号にならないうちから先を争って行こうとします。

まさにいじましい感じですが、「そんなに急いで、狭い日本のどこへ行く」といいたいところです。汽車やバスでも争って早く乗り席をとります。しかし事故に遭わないとは限りません。長野県で深夜、川に落ちて多数の死者を出したスキーバスのように、これが死出の旅と分かったら、そんなに先を争うでしょうか。
「冥(めい)土から迎えの使いが来たならば八十八まで留守と伝えよ」で、死にたくないものです。だが、生まれるのは偶然でも死ぬのは必然です。あなたもいつか必ず死にます。「いそぎ浄土へ参りたき心の候わぬ者をことにあわれみたもう」と阿弥陀如来を頼りに、現在を生き抜きたいものです。