こころの法話集255
お話255
打敷は仏の座の飾り
清水町島寺・浄福寺住職 藤井信哲
法事のときの仏壇には逆三角形の金欄(らん)の荘厳(しょうごん=かざり)がしてあることにお気づきと思います。これは葬式や忌中のときは、白いものに替えられています。
これは打敷(うちしき)といいます。お釈迦さまがお説法のときにお座りになる獅子(しし)座を、宝石や美しい衣服で荘厳したことに始まります。また釈尊が戸外でお説法のさい、弟子が衣服を地上に打ち敷いて仏の座をつくったことに始まるといいます。一説にはもと宮中の七、五、三などのお供物の敷物とか、外敷、内敷の卓布からきたともいいます。
仏前の前卓(まえじょく)と上卓(うわじょく)にかけます。打敷は平日にはかけません。祥月命日以上の年忌法要や中陰法要、正月、春秋彼岸、お盆、報恩講、結婚式など特別の仏事のときです。
中陰法要など忌中には白地の打敷を用います。金欄の打敷を裏返しているときがありますが、これは裏返しには意味がなく、白い裏地なので白の打敷の代用にしたものです。打敷の上には水板を置き、その上に燭(しょく)台、香炉、花瓶を置きます。
仏壇荘厳のものですから、あまり古く見苦しくなったものを用いるのは、仏さまへのお敬いになりません。これは仏さまのおわすお浄土の尊いありさまをも象徴するものです。なお下掛けまたは水引というもので前卓の周囲をかこみ覆い、その上に打敷をかけるのは報恩講など重要な仏事のときですが、お仏壇には打敷だけでよいでしょう。
打敷を平常かけっ放しなのは、平常と仏事のケジメに欠け、怠慢の感じがあります。なお打敷には夏用、冬用があり、宗派により相違がありますから、仏具店で確認しましょう。